総評

審査員代表 高崎勉

審査員代表
高崎勉

新型コロナウィルス拡散防止のため、世界的に活動の自粛を強いられている2020年春。その渦中に第3回目のグッドアピール賞フォトコンテストの審査を迎えました。

活動自粛の影響からか応募総数は減りましたが、特に人物写真が極端に少なかったことが印象的でした。

奇しくも当コンテストでは今回を含めて過去3回ともグランプリ作品には「人」が写っています。

肖像権の問題、プライバシー保護の観点において、人物を気軽に撮影、発表することが難しくなってきたのは事実ですが、やはり私たちは人間の営みの中に垣間見られる一瞬の輝きに心を揺り動かされるのでしょう。

このコンテストは優劣を競うことだけが目的ではありません。ご応募くださった全ての作品に審査員による講評文を付けせていただくことが特徴です。今年も1作品ごとに講評を述べさせていただきました。

これまでも審査、講評を通じて「テーマ性」の重要さを伝えてきましたが、2年前と比べ「自己表現」に向き合う作家の姿勢が、より多くの作品から伝わってきたことは当コンテストを継続してきた大きな成果と言えるでしょう。

安封昂雄
「ビジネスの架け橋」

安封昂雄
「ビジネスの架け橋」

高崎勉 講評

ガラスの歪みによって街の光景がモザイクのように見えるのがこの作品の面白いところですね。そしてよく見るとエスカレーターがあり、人物がいる。それらが鑑賞者の目に段階的に飛び込んできます。歪んだビル群の写り込みの奥に、歪みのない真っ直ぐなエスカレーターが右上がりになっていることも未来性があって見る側が希望を抱けます。
看板のロゴ、会社名がどうしても目につきますがリバース(反転)していることが救いですね。ミラー効果をうまく使った素晴らしい作品です。
やはりいい作品というのは長く鑑賞していられる作品だということですね。グランプリおめでとうございます。

高崎勉 講評

ガラスの歪みによって街の光景がモザイクのように見えるのがこの作品の面白いところですね。そしてよく見るとエスカレーターがあり、人物がいる。それらが鑑賞者の目に段階的に飛び込んできます。歪んだビル群の写り込みの奥に、歪みのない真っ直ぐなエスカレーターが右上がりになっていることも未来性があって見る側が希望を抱けます。
看板のロゴ、会社名がどうしても目につきますがリバース(反転)していることが救いですね。ミラー効果をうまく使った素晴らしい作品です。
やはりいい作品というのは長く鑑賞していられる作品だということですね。グランプリおめでとうございます。

小竹菊三郎
「25年目の神戸に集う語り部達」

小竹菊三郎
「25年目の神戸に集う語り部達」

高崎勉 講評

「神戸の震災からもう25年経ったんだ。」という気づきをさせてもらいました。
これは作品発表として、とても素晴らしい投げかけです。
もう少し空を入れて画面整理ができたら良かったのに。というのが正直な感想です。
この作品に限ったことではありませんが今回の応募作を全体を通じてカメラを横位置に構えた作品ばかりで驚いたのですが、これも縦位置の方がメッセージが伝わりやすかったのではないでしょうか。
しかし本当に綺麗。ずっと眺めて入られますね。
優れた描写のレンズ性能によるにところも大きいですが、最新機材の特性を活かして、よくぞ撮った!と思います。
美しさとメッセージがしっかり同居した素晴らしい1枚。

高崎勉 講評

「神戸の震災からもう25年経ったんだ。」という気づきをさせてもらいました。
これは作品発表として、とても素晴らしい投げかけです。
もう少し空を入れて画面整理ができたら良かったのに。というのが正直な感想です。
この作品に限ったことではありませんが今回の応募作を全体を通じてカメラを横位置に構えた作品ばかりで驚いたのですが、これも縦位置の方がメッセージが伝わりやすかったのではないでしょうか。
しかし本当に綺麗。ずっと眺めて入られますね。
優れた描写のレンズ性能によるにところも大きいですが、最新機材の特性を活かして、よくぞ撮った!と思います。
美しさとメッセージがしっかり同居した素晴らしい1枚。

今川 万記子
「時代をつなぐ橋」

今川 万記子
「時代をつなぐ橋」

高崎勉 講評

誰もが活動自粛を強いられ遊びに行けない、遠出したくてもできないという非常時の中で、静謐な世界観の写真は見ている側の心を落ち着かせてくれます。
これも縦の構図にするなどして画面右の部分を削ると表現したいことが整理できます。
この写真は静かですが、力があります。撮り手からの鑑賞者へのメッセージが充分に伝わってきました。
当コンテストの受賞者への副賞のひとつは受賞作品を高崎自らプリント~額装してお届けするのですが、これは「大きくプリントしてみたい」と思わされた作品です。

高崎勉 講評

誰もが活動自粛を強いられ遊びに行けない、遠出したくてもできないという非常時の中で、静謐な世界観の写真は見ている側の心を落ち着かせてくれます。
これも縦の構図にするなどして画面右の部分を削ると表現したいことが整理できます。
この写真は静かですが、力があります。撮り手からの鑑賞者へのメッセージが充分に伝わってきました。
当コンテストの受賞者への副賞のひとつは受賞作品を高崎自らプリント~額装してお届けするのですが、これは「大きくプリントしてみたい」と思わされた作品です。

※今回は人物部門の該当作品がありませんでしたので風景部門から2作品選出しました。

宮田 伸
「楽しかったね」

宮田 伸
「楽しかったね」

高崎勉 講評

他者の立体作品(建造物、彫刻、など)を被写体として借りた写真作品でコンテストを勝ち抜くには、そこに撮り手によって加味されるべき表現力が問われ、ハードルが上がります。
ですが背景のローラーコースターの配置、木立に投影するオレンジの夕焼けとの画面構成が写真作品として上手く成立していると判断しました。
ローラーコースターの女性的な曲線が、優しさをさらに強調していますね。逆光ですが露出的にもカバの親子のディティールがシルエットになり過ぎず、いいバランスに整っています。
「楽しかったね」というストレートな幸せに溢れたメッセージによって作品の力が増しています。

高崎勉 講評

他者の立体作品(建造物、彫刻、など)を被写体として借りた写真作品でコンテストを勝ち抜くには、そこに撮り手によって加味されるべき表現力が問われ、ハードルが上がります。
ですが背景のローラーコースターの配置、木立に投影するオレンジの夕焼けとの画面構成が写真作品として上手く成立していると判断しました。
ローラーコースターの女性的な曲線が、優しさをさらに強調していますね。逆光ですが露出的にもカバの親子のディティールがシルエットになり過ぎず、いいバランスに整っています。
「楽しかったね」というストレートな幸せに溢れたメッセージによって作品の力が増しています。

高崎先生と松龍先生による審査の様子。
今年は状況に合わせてオンラインでの審査となりました。

高崎先生と松龍先生による審査の様子。
今年は状況に合わせてオンラインでの審査となりました。

審査員

審査委員長
高崎勉(写真家、一眼レフカメラ上達講座講師)

審査員

審査委員長
高崎勉(写真家、一眼レフカメラ上達講座講師)

1967年富山市生まれ。1987年東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業。
アマナコーポレーションにてフォトグラファーとして12年間の勤務を経て、1999年高崎写真事務所設立。
以降、広告撮影と並行しアーティストとして作品制作にも意欲的に活動。2011年から定期的に作品を発表。
同年、初の個展となる「Breath.」展開催。

「毎日広告デザイン賞発言広告の部最高賞」をはじめ数多くの受賞歴を持つとともに、幅広い雑誌・書籍等で写真作品が掲載されている。最近ではアート作品が広告として使われる場面が増えている。
2013年に発足したJapanPhotoGlobe(日本の写真文化を海外へプロジェクト)に参画。自身の作品に留まらず写真家の写真展、写真集のディレクションを手がける。2014年、写真講座「TakasakiSeminar」開講。
コマーシャルゼミ(A-side)ではプロカメラマンに向けて「商品を売る写真」をテーマにクリエイターを育成。
アートフォトゼミ(B-side)ではアマチュアからアーティストまで幅広い層に指導。NPO法人「16歳からの仕事塾」の依頼を受け、中学生、高校生に向け講演・ワークショップを開催。また大学の研究機関から学会提出のための実験記録撮影を依頼されるなど、研究の現場にも積極的に参加。

・「日本の写真文化を海外へプロジェクト」ディレクター
・写真塾「Abox Photo Academy」塾長

【受賞歴】
・第65回毎日広告デザイン賞発言広告の部最高賞受賞
・日本広告写真家協会(APA)’06広告部門及び写真部門入選
・87th N.Y.ADC Graphic Design:Poster部門入賞
・消費者のためになった広告コンクール2012雑誌部門金賞他受賞多数。

1967年富山市生まれ。1987年東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業。
アマナコーポレーションにてフォトグラファーとして12年間の勤務を経て、1999年高崎写真事務所設立。
以降、広告撮影と並行しアーティストとして作品制作にも意欲的に活動。2011年から定期的に作品を発表。
同年、初の個展となる「Breath.」展開催。

「毎日広告デザイン賞発言広告の部最高賞」をはじめ数多くの受賞歴を持つとともに、幅広い雑誌・書籍等で写真作品が掲載されている。最近ではアート作品が広告として使われる場面が増えている。
2013年に発足したJapanPhotoGlobe(日本の写真文化を海外へプロジェクト)に参画。自身の作品に留まらず写真家の写真展、写真集のディレクションを手がける。2014年、写真講座「TakasakiSeminar」開講。
コマーシャルゼミ(A-side)ではプロカメラマンに向けて「商品を売る写真」をテーマにクリエイターを育成。
アートフォトゼミ(B-side)ではアマチュアからアーティストまで幅広い層に指導。NPO法人「16歳からの仕事塾」の依頼を受け、中学生、高校生に向け講演・ワークショップを開催。また大学の研究機関から学会提出のための実験記録撮影を依頼されるなど、研究の現場にも積極的に参加。

・「日本の写真文化を海外へプロジェクト」ディレクター
・写真塾「Abox Photo Academy」塾長

【受賞歴】
・第65回毎日広告デザイン賞発言広告の部最高賞受賞
・日本広告写真家協会(APA)’06広告部門及び写真部門入選
・87th N.Y.ADC Graphic Design:Poster部門入賞
・消費者のためになった広告コンクール2012雑誌部門金賞他受賞多数。

審査員
・松龍(写真家、作家)

審査員
・松龍(写真家、作家)

1964年東京生まれ。  
IT Engineerをしながら、作家活動、講師活動をしているArtist。
Charles Robert Darwin、長谷川真理子らに哲学的影響を受け、Michael Kenna、Robert Mapplethorpeらに写真家として影響を受け、テラウチマサト、神島美明、高崎勉らから直接指導を受けた。  
人類が美を認知する知性を獲得したのは、36億年間生存競争をして進化した結果だと私は考えている。
これは人が安全を感じたり他者に共感したりする能力の拡張だと私は考えるに至っている。  
これらから「くうをみる」「世界の始まり」「宙と墨」という作品シリーズを制作してきた。
人に「美」という概念が存在する理由を追い続けて作品を発表していこうと思っている。

1964年東京生まれ。  
IT Engineerをしながら、作家活動、講師活動をしているArtist。
Charles Robert Darwin、長谷川真理子らに哲学的影響を受け、Michael Kenna、Robert Mapplethorpeらに写真家として影響を受け、テラウチマサト、神島美明、高崎勉らから直接指導を受けた。  
人類が美を認知する知性を獲得したのは、36億年間生存競争をして進化した結果だと私は考えている。
これは人が安全を感じたり他者に共感したりする能力の拡張だと私は考えるに至っている。  
これらから「くうをみる」「世界の始まり」「宙と墨」という作品シリーズを制作してきた。
人に「美」という概念が存在する理由を追い続けて作品を発表していこうと思っている。

カード型旅行券「JTBトラベルギフト」をプレゼントいたします。
金額は受賞された賞に応じた金額となります。
カードには受賞作品をプリントいたします。思い出の品としてぜひお受け取りください。

カード型旅行券「JTBトラベルギフト」をプレゼントいたします。
金額は受賞された賞に応じた金額となります。
カードには受賞作品をプリントいたします。思い出の品としてぜひお受け取りください。

審査を終えて

世界的に政治、経済、教育、そしてアートも大きく価値観が変わろうとしています。そして写真を撮る人の気持ちも今まで通りではなくなってくるでしょう。

いまこうしている間にも、誰かにとってかけがえのない1枚となるシャッターチャンスがあなたのすぐ側に起こってるかもしれません。

どんどん写真を撮っていきましょう。そして誰かに見てもらうことで化学反応が起き、世界が少しずつ優しさを取り戻す力が芸術にあり、それだけは不変であると信じています。

今回、入選を果たせなかった方、応募を見送った方も来年はぜひ新しいチャレンジをなさってください。